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定期ゼミレポート Vol.2

今回は、受講生のリクエストにより、急遽「楽曲研究」の時間を設けることになった。曲目はバロックの小品。この類の作品は、掘り下げようと思えば、いくらでも掘り下げられる。何より、積極性が嬉しい!

【和声】音階固有和音

音階固有和音
音階固有音の上に音階固有音で形成される三和音を音階固有和音という。言葉で説明すると難しい(笑)…けれど、ハ長調のそれを五線紙に書けば「あ~あ~、ハイハイ!」という感じ。ここで、三和音だけでなく四和音(7の和音)も、必ず整理しておくと後々役に立つ。

長調と短調を同じウェイトで!
和声学の書籍で第一項目に置かれる音階固有和音の説明は、概ねハ長調のみでなされている。…が、実用性を考えて、
短調の方も、自然短音階と和声的短音階を個別にして譜面を書き(+音を出し)、同じウエイトで確認をしておくのが良い。その一手間をかけることで、やがて頭を悩ませるであろう(笑)、短調の和声分析の苦手意識を回避できる。

【実習】和声の基盤作り

実用的な和声学への下準備
和声を五線紙の上だけでやっていても、実践は役に立たない。必要なことは、“各音階固有音と隣接音の音程関係” “各音階固有和音の三和音の種類(長・短・減・増)” 総合的な音の記憶。わかり易く言えば、12長調・12短調(自然短音階と和声的短音階を別に数えれば24)の固有和音を、楽譜なしでスラスラと音にできる力。早い話、音の記憶があれば五線に丸を重ねた図形は必ずしも必要ではない。※この時、相対音感を用いる方が良い

音階固有和音の響き(ハ長調・イ短調)

…というわけで、まず音階固有音と固有和音を、ハ長調で音にしてみる。受講生に、音階固有音の記憶がない人は流石にいないけど、音階固有和音となると…  短調となると…  さらに移調すると… 、どんどん怪しくなっていく(笑)。これは、音階練習課題の重要な一項目

【楽曲研究】クリーガー「メヌエット」

“生徒がコンクールを受けるので…” という要望で、急遽クリーガーのメヌエットの楽曲研究。実はこの辺り、私の得意分野(笑)。これまでも、しばしば似たようなことをやってきて、今日がある。

バロック時代の演奏スタイル
本来、バロック作品の解釈には、相当量の予備知識が必要。それを端折って、答えだけを示してもあまり意味はない。中でもポイントとなるのが、当時の演奏習慣楽譜の持つ意味 が今日とは大きく違っていること。百見は一聴に如かず”(笑)。音で実例を示してみる。

【実習】アーティキュレーション/装飾法

実際に質問のあった二か所を取り上げ、実習。説明を聞くだけでなく、自分でやってみて初めて解ることがたくさんある。

アーティキュレーションと装飾法の実習

~4小節のアーティキュレーション
この部分は、左右共に様々なアーティキュレーションが考えられる。各自が自分のアーティキュレーションを楽譜に書きこんで実演してみる。アーティキュレーションによって、演奏の表情は大きく変わる。アーティキュレーションは、バロック音楽に於ける表現要素の中で、非常に大きなウェイトを占める。

装飾音の奏法
楽譜に、プラルトリラーが付されてるので、まず、プラルトリラーとしての演奏法を考えてみる。少なくとも5~6通りの奏法は出て欲しいところ…。もちろん、別の装飾音を入れることも考えられる。また、楽譜によって装飾記号のないものもあると思うが、ここには、古い時代の慣例
に従って何らかの装飾音を入れるのが望ましい。

バロック音楽の魅力
バロック音楽では、アーティキュレーションにしても装飾音にしても、奏法の取り決めは、原則、演奏者に任される自分で決めることにはじめは戸惑いを感じると思うけど、慣れるとこれが際限ない自由に変わる。もちろん、“自由”とは、最も難しいことではある。権限は、使い方を間違えれば猛毒になる…(笑)。

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